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子どもの命を守るためには

7月18日(火)は文教厚生常任委員会で千葉県野田市役所に行政視察に伺いました。栗原心愛ちゃんが虐待を受け命を失ってから2年半。あの凄惨な事件後、行政はどう変わったのか?今回の視察目的は児童虐待についてでした。
人員配置から始まり、様々な対応策が講じられていました。そして、ここまで取組まないと子ども達の命を守っている事にはならないし、守れないのだと強く感じました。行政視察後は、意見書を提出することになっておりますので、今回はその意見書をそのまま掲載します。
以下 行政視察意見書です。

視察終了後に担当部長に尋ねてみた。
野々口  「白岡市では年に100件の要対協案件があるが、ケースワーカーは3人です。いかが思いますか?」

担当部長 「ケースワーカーが少なすぎますね。網の目からこぼれ落ちている子ども達がいると思います。どこの自治体もそうだけど、確実に言えることはマンパワーの不足が問題です。」
野田市では、あの凄惨な虐待事件が起きてから、すぐに所管する部の体制を変えることから始めており、現在、この課は様々な専門的知識を有している職員を含め30名いる。

「二度とこのような事件を起してはならない。子ども達の命がかかっているのだ。ここに職員を多く配置するのは未来への投資である」と語ったのは、事件後すぐに所管である健康こども部に拝命された部長である。

「子どもの命を守ること以上に優先させるものはない」という信念とこの部長のリーダーシップにより、現在の野田市の子ども達が守られていることを実感した。

特に以下3つの対策については、他自治体では例をみないだろう。
 一つめは、通報があれば、すぐに現場(学校や幼稚園、保育園など)に行き児童生徒を市役所で保護する事である。児童相談所職員が保護する場合においても「連れ去り」は大きな問題となる場合が多い。さらに保護者との関係性を考え「一歩」が踏み出せないこともある。野田市には、突撃することに対する不安を払拭するだけの強い意志と環境がある。

二つめは、警察の介入だ。他の虐待死事件からもわかるように児相職員や自治体職員が訪問しても居留守を使われたりと面会が出来ないことが多い。また、警察も事件でないとはなかなか関わってもらえないとの認識であった。
 しかし、野田市は訪問した時に拒否されれば重篤と判断し、警察に連絡する体制になっている。このように警察が積極的に関わることが他自治体でも当然となれば、虐待死は未然に防ぐことができるだろう。
 三つ目は、教育委員会内に健康子ども部の分室が設置されていることである。執行部と教育委員会の壁を取っ払い連携することは、こどもの命を考えれば当然の体制ではあるが、そのぶ厚い壁が崩せない自治体が殆どである。不要な壁と認識しているのに、実行できないのが現状である。

様々な対策が打ち出され実行している野田市。事件があったからここまで充実した対応がとられているのだろう。
では、白岡市はどうなのか。
まだ未解決事件とはいえ、市内の中学校に通学している生徒一人が亡くなっているのである。担当部署もその家庭への関わりは、持ってきたであろう。しかし、野田市の部長は「見守りは支援ではない。支援ネグレクトにしてはいけない」と言い切った。

命を守れなければ意味がないのだ。
白岡市は、なにが不足していたのか?どうすれば彼を救うことが出来たのか?事件解決とは関係なく検証できるはずである。また、それはしなければならない。
それに真っ向から取組まない限り、白岡市における児童虐待の根本的な解決には、辿りつけない。今回の野田市行政視察は、まずは市内で起きた事件の検証をしてこそ活かされるものだと思う。早急な対応を要望する。

1時間30分全ての説明をして下さった部長の話は、随所随所に本心からくる言葉がいくつもあったが、特にこの言葉は聴いていて辛かった。

「信頼できるはずの大人が頼りにならなかった。
大人の助けを待っていた心愛ちゃんは、最後は大人の助けをあきらめ死を覚悟していた。もう二度と起してはいけない。信頼できる大人にならなければいけない。」
その時の心愛ちゃんの気持ちを考えるといたたまれなかった。

これは野田市だから起きたことではない。どこの自治体でも起こり得るのである。だからこそ、行政職員一人一人が頼りになる信頼できる大人の存在であって欲しいし、私も一人の大人として信頼できる存在になりたいと思う。
事件が起きてからでは手遅れなのだ。
子どもの命をもっと重く真剣に考えるべきだと強く思った視察であった。 
以上



最後に私があえて栗原心愛ちゃんの名前を記載したのは、事件を検証した専門家の報告書からの一文を読み、共感したからです。

(報告書より)
本児の名前を出したのは「名前のある個人として無念のうちに亡くなった子どもを「本児」」で終わらせることがしのびなかった。亡くなった本児の個人の尊厳を重視した。


心愛ちゃんのご冥福を祈ります。